ドメイン名取得時の注意点(ドメイン名と商標の関係)

ドメイン名は先に取得した人に使用できる権利が与えられます。
しかし、商標をドメイン名やドメイン名の一部に使用した場合、そのドメイン名の利用が制限されたり、損害賠償請求に至る場合があります。
ドメインを取得する際の注意点をドメイン名と商標の関係を中心に、簡単ですが整理してみました。

【ドメイン名に関するトラブル】

ドメイン名は先に取得した人に使用できる制度がとられています。インターネットが普及するにしたがって、企業名や商品名やそれらに類似するドメイン名を第三者が先に取得することで、そのドメイン名を高額での買取を要求したり、企業や商品の知名度や信頼にタダ乗りしたり、逆に信頼をおとすようなサイトを運営するといったトラブルが発生しています。

【ドメイン名の不正使用への法的な対応】

ドメイン名の不正使用が増えるにつれて対応が進みました。
1999年にWIPO(世界知的所有権機関)で「周知商標の保護規則に関する共同勧告」( http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/wipo1216.htm )が採択され、国際ルールとなっています。それをうけ、国内においても2001年改正された不正競争防止法( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO047.html )にドメイン名に関する記載が追加されています。

不正競争防止法第2条第1項第12号には次のような記載があります。

十二 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

商標と同じドメイン名だけでなく、商標に類似したドメイン名についても使用が法的に制限されていることがわかります。

【ドメイン名の不正使用に対する損害賠償請求】

ドメイン名の不正使用によって不正競争防止法に抵触した場合、損害賠償を請求されることはあるのでしょうか?不正競争防止法第5条第3項には次のような記載があります。

3  第二条第一項第一号から第九号まで、第十二号又は第十五号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
(一から三は略)
四  第二条第一項第十二号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用
(五以降略)

商標と同一または類似したドメイン名を不正に取得され損害を受けた場合には、損害額を請求することが可能であることがわかります。

【ドメイン名の不正使用に対する手続き】

では実際に不正利用があった場合、どのように手続きするのでしょうか?
手続きには、DRPと呼ばれる手続きと、裁判による手続きがあります。

DRPとはDomain Name Dispute Resolution Policy(ドメイン名紛争処理方針)の略で、ドメイン名の紛争を解決する手続きとして1999年にICANNがgTLD向けにUDRPを制定しました。ccTLDにおいてもUDRPに準じたDRPを制定されています。JPドメインではUDRPに準じたJP-DRPが制定されています。

JP-DRPには次のような特徴があります。(JP-DRPとは – JPNICより)

  • 費用が裁判と比較して低額です。
  • 当事者からの書類に基づいてパネルが審理します。
  • 短期間(55営業日以内)に裁定されます。
  • 損害賠償は認められません。
  • 裁定内容に不服な場合、裁判に移行することが可能です。

これによりドメインの紛争処理を短い時間で安価に行うことが可能になりました。

不正使用についてはJP ドメイン名紛争処理方針 第4条に記載があります。
簡単に要約すると、申立人は以下の3つを立証する必要があります。

  • 登録者が商標と同一または混同するドメイン名を使用している
  • 登録者がドメイン名に関する権利を有していない
  • 登録者が不正な目的のため登録・使用している

不正な目的の例として、第4条 b に以下の4つの例が提示されています。

  • 転売・貸与で、ドメイン名登録・維持にかかった以上の対価を要求するため
  • ドメイン名を使用できないように妨害するため
  • 競業者の事業を混乱させるため
  • 誤認混同を生じさせ、同サイトや他のサイトに誘導するなど、商業上の利益を得るため

ドメイン名の権利を有している例として、第4条 c では以下の3つの例が提示されています。

  • 商品やサービスを、正当な目的をもって行うため
  • ドメインの名称で一般に認識されている
  • 誤認により商業的利益を惹き起こさずまた申立人の価値を毀損することなく、非商業的または公正に利用している場合

JP-DRPの裁定をみると、登録者が企業の場合には、不正な利用の「商業上の利益を得るため」と認定されることが多いです。
しかし個人等が運営する(広告やアフェリエイト等を実施していない)コミュニティサイトやファンサイトに関する裁定はこれまでありません。不正な目的や商業的か否かといった判断に関しては、今後の裁定が待たれるところです。
たとえJP-DRPに抵触しなくても、不正競争防止法に抵触する場合もありますので、注意が必要です。

【どのような裁定・判決が下るのか】

では実際にどのような裁定や裁判がされたのでしょうか?
日本国内では以下のような事例があります

ドメイン名に関する裁判の例

  • 2000年 JACCS.CO.JPドメイン に関する裁判
    → ドメイン名の使用停止
  • 2001年 J-PHONE.CO.JPドメイン に関する裁判
    → ドメイン名の使用停止

ドメイン名に関するJP-DRPによる裁定例

また商標名に類似したドメイン名に関するJP-DRPの裁定例としては次の裁定があります。

JP-DRPへの申立はhttps://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/all.html より参照できます。
上記の事例からも、商標名と同じドメイン名だけでなくドメイン名の一部に商標名を用いた場合についても、ドメイン名の取り消しや移転が行われていることがわかります。
国内外の事例については、経済産業省 知的財産政策室「不正競争防止法の一部改正(ドメイン名関係)に伴う事例集の紹介について」( http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/01kaisei.pdf )に記載されていますので、参考にしてください。

【商標権者はどのように対応しているのか?】

商標権者によっては、商標権に関わる名称を使用しないよう案内している企業もあります。これは事前に案内することで、トラブルを未然に防ごうとしています。

例)マイクロソフト
マイクロソフトのサイトには、会社名・製品名・サービス名をドメイン名に使用しないように次の通り記載されています。(マイクロソフト商標ガイドライン(一般ガイドライン)より)

会社、製品、サービスおよびドメイン名
マイクロソフトのロゴ、標章、アイコンを含むマイクロソフトの商標、または混同を来す恐れのある類似語を、お客様の会社名、商号、製品名、サービス名またはドメイン名の一部として、使用・登録しないでください。また、お客様の会社名、商標、サービスマークもしくは製品名を、マイクロソフト製品名に隣接して、もしくは組み合わせて表記しないでください。

例)Debian
オープンなOSであるDebianのサイトには、商用・非商用問わずドメイン名にDebianの商標は使用できないと、次のとおり記載しています。(Debian Trademarks より)

When You Can NEVER Use the Debian Trademarks Without Asking Permission
(略)
4. You cannot use Debian trademarks in a domain name, with or without commercial intent.

例)WordPress

著名なCMSであるWordPressのサイトには、ドメイン名にWordPressの名前を使わないように次のとおり記載されています。(上段WordPress Domainsより、下段WordPress ドメイン名ポリシーより)

For various reasons related to our WordPress trademark, we ask if you’re going to start a site about WordPress or related to it that you not use “WordPress” in the domain name.

さまざまな WordPress 商標に関わる理由により、もし WordPress についてのサイトや関連サイトを立ち上げる際には、「WordPress」をドメイン名に使わないよう、お願いしたいと思います。

【まとめ】

商標に類似する場合、すでに取得されたドメイン名であっても利用できなくなることが発生しえます。またドメイン名の一部に商標が含まれる場合でも同様です。
個人が運営するサイトでも、利用していたドメイン名が商標権の抵触することで突然利用できなくなることがありえます。特定の製品やメーカーを支援するような内容であっても商標を含まないことが重要です。

本記事の作成にあたっては以下を参考にしました。
ドメイン名紛争処理方針(DRP) – JPNIC( https://www.nic.ad.jp/ja/drp/index.html )
JPNIC「JP-DRP 解説」( https://www.nic.ad.jp/ja/drp/JP-DRPguide.pdf )
経済産業省 知的財産政策室「不正競争防止法の一部改正(ドメイン名関係)に伴う事例集の紹介について」( http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/01kaisei.pdf )